4.桜 第2話
桜皮(オウヒ)
桜の皮は桜皮(オウヒ)と呼ばれ、日本独自の薬木として発展してきました。
桜皮は主にヤマザクラやカスミザクラなどの樹皮を7月頃に採取し乾燥させたもので、古来魚の中毒、皮膚病の治療、咳止、解熱を目的に民間薬として使用されてきました。
一方、漢方でも用いられます。世界で初めて全身麻酔を行い乳がんの手術を行った江戸時代の外科医華岡青洲(はなおかせいしゅう)が、解毒薬として考案した十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)という処方に桜皮(又は樸樕)が配合されています。
今日では桜皮抽出エキス(ブロチン液、サリパラ・コデイン液)が鎮咳去痰剤として利用されています。
オウヒ中の成分には、多くのフラボノイド類を含有していることが分かっています。
このうちサクラネチンには、糖尿病患者のインスリン分泌を改善する働きをもつタンパク質のアヂポネクチンの分泌を増加させる働きがあります。
また、大豆イソフラボンの一種として知られるゲニステインを含有し、女性ホルモンの一種のエストロゲン様作用を持つことから、骨粗鬆症や女性特有のがんを予防することが期待されます。
注)十味敗毒湯 桔梗、柴胡、川芎、茯苓、防風、桜皮(又は樸樕)、甘草、荊芥、独活、生姜の10種の生薬から構成される漢方処方で、胸脇苦満(きょくきょうくまん)があり、分泌物があまり多くない化膿症やアレルギー性皮膚疾患に用いられる。
桜皮
ヤマザクラ
ここで一区切り
ブロチン液