2.クソニンジン

ヨモギの仲間から抗マラリア薬

クソニンジンArtemisia annua L.はアジアからヨーロッパにかけて広く分布する植物で、日本へは中国から入ってきて帰化しました。キク科ヨモギの仲間ですが、かなりインパクトのある名がつけられています。

世界保健機構(WHO)によるとマラリア感染者は、年間約4億人、死亡者は年間約200万人いると報告されており、アフリカなどの熱帯・亜熱帯地域では重大な感染症となっています。

中国国家によるマラリア治療薬の探索プログラムで、古くからマラリアなどの感染症や炎症性性疾患に使用されていたクソニンジン(中国名:青蒿 セイコウ)がとり挙げられ、有効性が認められました。

1972年に中国人女性科学者、屠呦呦(Tu Youyou)博士らは、その有効成分がアルテミシニン(artemisinin)であることを明らかにしました。

その結果、アルテミシニンとその誘導体が抗マラリア薬として世界中で利用されています。
しかし日本はマラリア感染とは無縁な国であることから、アルテミシニンという医薬品はほとんど知られていません。

この功績により屠呦呦博士は、2011年に医学分野で顕著な業績を上げた科学者へ贈られるラスカー賞を、2015年に感染症治療薬の開発で大村 智北里大学栄誉教授らと共にノーベル医学・生理学賞を受賞しました。

しかし近年、アルテミシニン耐性の原虫が出現してきており問題となっています。感染症と人類の戦いは永遠に続きそうですね。

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