1.カンレンボク(キジュ)

喜びの樹は命の木

 中国原産のヌマミズキ科カンレンボク Camptotheca acuminataは、強い生命力と多くの実をつけることから、子孫繁栄にたとえられる喜びの木として喜樹(キジュ)と呼ばれています。

従来、庭木、街路樹や加工材として用いられてきましたが、抗ガン効果が知られたことから、cancer tree、tree of life、happy treeなどとも呼ばれます。

米国癌研究所(NCI)の抗腫瘍活性薬開発のスクリーニングの過程で、カンレンボクに強力な抗腫瘍活性が見出されました。
その後1966年、米国のWallやWaniらは、抗腫瘍成分のカンプトテシン(camptothecin)というキノリン系アルカロイドを単離しました。
この成分には、面白い作用が見いだされました。
細胞は細胞分裂の際に絡み合った2本のDNAを1本切断してほどいたり、2本切断してほどいたりしてDNAの複製を可能にします。

カンプトテシンには、DNAを1本切断する働きのあるⅠ型トポイソメラーゼという酵素を阻害して細胞分裂を抑制するという特異的な作用が見つかりました。

その結果、癌細胞のように活発に細胞分裂をおこす細胞は、アポトーシス(細胞の自殺死)を起こし死滅します。しかし、正常細胞にもダメージを与えることから骨髄抑制など強い副作用が現れます。

米国ではカンプトテシンの強い毒性と水に対して難溶性であることから抗癌剤の開発を断念しました。しかし日本のヤクルトという会社は、カンプトテシンの構造をもとにイリノテカン(irinotecan)という抗癌剤を開発しました。

イリノテカンは国内で、肺ガン、大腸ガン、婦人科ガンなどに適用され、また海外では、大腸ガンの第一選択薬として使用されています。


キジュ
ここで一区切り

(イリノテカン塩酸塩水和物、ヤクルト)