2.ジャガイモとソラニン

 ジャガイモ(馬鈴薯)による食中毒事件が毎年のように起こっています。
ジャガイモにはビタミンB群、ビタミンC、カリウムなどが豊富に含まれており、デンプン質はご飯の約半分のカロリーということから、成人病の予防や美容によいといわれています。
更にジャガイモ中のビタミンCは柑橘類に匹敵するほど豊富で、デンプン質に包まれていることから、加熱しても分解されにくいという性質をもっているそうです。

ジャガイモは、春と秋の年2回採れ低温で保存されますが、常温に放置しておくと芽が出てきます。
この芽にはソラニンやチャコニンなどの有毒なアルカロイドを生成します。
そこで料理の時には必ず芽の部分を取り除いて調理することは常識になっていますよね。
しかし毎年のように食中毒事件が発生しています。何故でしょう。
家庭菜園などでジャガイモを収穫した後に、日の当たる所や明るい場所に放置すると皮が緑色に変わることがあります。
この緑色の皮の部分にソラニンが多量に生成されています。
ソラニンは神経毒の一種で、神経情報伝達で働くアセチルコリンを分解する酵素、アセチルコリンエステラーゼを阻害する働きがあります。
分解されるべきアセチルコリンが溜ると、神経系が異常興奮をおこし、農薬中毒と同じような中毒症状、最初に頭痛、嘔吐を起こし、発熱と手足の冷え、頻脈、血圧低下を生じ、時には心不全などで死に至ることもあります。
ポテトを使った料理では、芽の出たジャガイモは必ず芽と窪みをえぐって除き、また緑色になってきたジャガイモの皮を厚めに剥けば問題はありません。
ジャガイモの切り口は空気にふれていると褐色になってきますが、これはチロシンというアミノ酸が酵素の働きでメラニンに変わるからです。
そこで水にさらしてチロシンや酵素を溶かし出してしまえば、褐色に代わるのを防ぎます。
調理する前に水にさらす事は、ソラニンが水溶性で水に抜ける事からも理にかなっています。


芽がでてきたジャガイモ

左:緑色になったジャガイモ
右:普通のジャガイモ