1.トリカブトの誤食

 トリカブトを誤食するという中毒事件がしばしば見られます。
平成24年4月に北海道函館市の住民が、ニリンソウを摘んでおひたしにして食べたところ、3名が嘔吐などを引き起して病院に搬送され、2名が亡くなるという不幸な事件がありました。
どうも山菜のニリンソウと間違えて食べたことによるものと考えられています。
ニリンソウとトリカブトは同じキンポウゲ科の植物で、春先の根生葉がよく似ています。ニリンソウは川の近くなどの湿ったところに群生し、4~5月頃に白い可憐な花を二輪つけます。また癖がなく人気のある山菜です。
 トリカブトも同じように湿ったところに生育し、しばしばニリンソウと混生します。
 トリカブトは成長してくれば茎が立ってくるので一目瞭然で区別できますが、春先はどちらも根生葉のみですので山菜を摘む場合は注意が必要です。
トリカブトには多くの種類が知られていますが、北海道や東北地方などのものは特に毒性が強いようです。

 また、民間薬としてよく知られるゲンノショウコもよく似た葉をしていますが、夏の開花時期に採取しますので問題が生じません。

トリカブトの花
トリカブトの芽生え
ニリンソウ
ここで一区切り

 

ニリンソウ

 ニリンソウはキンポウゲ科アネモネ属の植物です。
この仲間には、イチリンソウ、サンリンソウ、アズマイチゲ、キクザキイチゲなどがありどの種類も可愛い花をつけますが、ニリンソウ以外は有毒とされています。
ニリンソウやイチリンソウの花弁のような白い花は、ガクにあたります。

 私たちの大学の近くでは古里にあった植物がほとんど消えてしまいましたが、今でも造成されていないところにイチリンソウ、ニリンソウ、ツクバトリカブトなどの自生が見られるところがあります。
この貴重な自然をいつまでも残していきたいですね。

 

薬にも毒にもなるトリカブト

 トリカブトの仲間は、キンポウゲ科のトリカブト属(Aconitum)で、日本には約30種が知られています。
多くのトリカブト属植物は舞楽に用いる鳥兜に似た花をつけますが、青い花は花弁でなくガクにあたります。
トリカブトは、根、葉、花粉、蜜など全ての部位にアコニチンなどの有毒なアルカロイドを含有しています。
その毒性は時期や地域により大きく異なりますが、誤飲すると嘔吐、呼吸困難を起こすことがあります。
しかし東洋医学では重要な薬になります。
弱毒化した塊根を附子(ブシ)と称して、新陳代謝機能の改善などを目的に桂枝加朮附湯、八味地黄丸などの漢方処方に配合されます。
例えば強い冷え性にはよく附子が用いられますが、西洋医学では冷え性を改善するような体質改善薬は見当たりません。

 トリカブトについては色々な話がありますので、また別の機会にご紹介しましょう。